神々自身 (ハヤカワ文庫SF)

神々自身 (ハヤカワ文庫SF)

<粗筋>
 西暦2070年。並行宇宙より、タングステンとの交換によりもたらされたプルトニウム168は無公害、低コストで無尽蔵のエネルギーを生み出した。
 二つの宇宙をつなぐポンプが作られる。しかし、この夢の取引には恐るべき陥穽が隠されていた。
<感想>
 たまには海外SFをと思ったのだけど、随分と時間がかかってしまった……。問題編、パラ宇宙編、解決編の三部構成。独創的なのは人類とはまったく違う生態を持つパラ宇宙のデュアたちを描いた第二部、そして月に進出した人類を描いた第三部かな。
 想像することさえ難しい世界を、頭に思い描けるように書き表すというのは本来、実に難しいことのはずなんだけど、それを自然にやり遂げているのはさすがSFの大家か。
 ただ、構成としてはこの3つが独立し過ぎていて、どうも収まりが悪い気がする。特に第二部はまるごと無くてもあまり影響がないのでは……。それでも、まるで人類と違う生態でも、やはり人類と同じようなしがらみに囚われているところは面白い。
 タイトルの『神々自身』とは、「愚昧を相手にしては、神々自身が論ずるも空し」という言葉からの引用とのことで、さもありなんというタイトルである。それにしても、友人の言い間違いから発想を得て、ひとつのSFを書き上げるという、その発想力は凄いなあ。
 正直、海外SFはいまいち性には合わないところがある。日本の現代SFの方が身近で面白く感じるかなあ。海外の現代SFの現状とかを知らないので、その辺は誤解があるのかも知れない。