たんぽぽ娘 (奇想コレクション)

たんぽぽ娘 (奇想コレクション)

<粗筋>
 「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」丘の上にいたのは、たんぽぽ色の髪が風邪におどる、未来から来た少女……。表題作ほかを収めた短篇集。
<感想>
 『ビブリア』や『CLANNAD』を出すまでもなく、タイトルだけはよく知られていたものの、絶版で長らく読めなかった作品をようやく読むことができました。期待先行で実際読んでみたら……、ということもなく、このロマンチックな中年ミーツガールな小説が好かれるのもよく理解できるお話。
 『夏への扉』と言い、日本人は中年ミーツガールなSFが好きなのかしらん。
 他の収録作も負けず劣らず、と言いたいところなのだけど、ちょっと読後感はバラバラかなあ。後書きによると、収録作が書かれた時期もかなりバラバラみたいだし。『たんぽぽ娘』では良い感じだったロマンチックさが過剰だったり、幻想的雰囲気が過ぎたり、というのもあるにはある。
 でも、総じてワンアイディアを幻想的に昇華して、ロマンチックな文章で綴られた好短編が多いのは間違いない。他に印象的なのは、藤子F氏的な匂いのする『特別急行がおくれた日』、想像の余地の広がる『第一次火星ミッション』かな。