蜩ノ記

蜩ノ記

<粗筋>
 羽根藩の檀野庄三郎は、家老により幽閉中の戸田秋谷の元へ遣わされる。彼は七年前、前藩主の側室と不義密通を犯し、家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。庄三郎には補助と監視、過去の事件の真相探求が命じられる。だが、秋谷の清廉さに触れ、その無実を信じる。
<感想>
 最後の方はちょっと泣きそうだった。三年後に切腹しなければならない戸田秋谷の監視を命じられた、若い庄三郎の心の機微がなんというか、良い。秋谷はちょっと完璧超人すぎる感が無くもない。不完全な庄三郎に心動かされる。
 七年前に端を発する羽根藩に隠された秘密は、ちょっと人名などが入り組んで分かりにくいところがあるけれど、文章は平易で美しく読みやすいので、あまり囚われずに読むことができる。ただ、視点が不意に変わりがちなのがちょっと気になるかも。それは引っかかった。