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- 作者: 冲方丁
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/09/01
- メディア: 単行本
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水戸藩二代目藩主・徳川光圀。晩年、彼は家老・藤井紋太夫を自らの手で殺める。なぜ、そうしなければならなかったのか。
それには光圀の一生をかけた理由があった。
<感想>
たとえば、兄と自分の子を入れ替えてそれぞれの跡取りとした、『大日本史』の編纂を命じた、若い頃は荒れていて辻斬りをしたこともある、等々の断片的な知識は持っていても、系統立てて徳川光圀という人を知っているとは言えなかったんですよねえ。
他にも名前は知っていても、何をどうしたのかは詳しく知らない人というのは、実は江戸時代には結構多い。この前に読んだ佐久間象山でもそうでしたけど。恥ずかしい限り。
徳川光圀は、一言で言えば義を重んじた人。ただ一言に「義」と言っても、では「義」とは何なのか、というのが問題になる。そのために学び、鍛え、行動した人ということかしら。
そして、また光圀はとにかく人の死を見続けた。父母はもちろん、師、友人、妻、子、部下。生きることとは、他人の死を見届け続けることなのではないかと思うほどに。
なぜ藤井を殺めたのか、そのクライマックスに至るまでを心に迫る筆致で書き綴り、徳川光圀という人はこういう風に生きて、そしてこういう風に死んでいったのかと、読み終えた時にはまさに一人の人生を見届けたような気分でした。