<粗筋>
 「僕、女の子を殺したんだ」同級生・神野の突然の告白を、明海はあっさりと受け入れる。なぜなら、明海もまた小学生の時に女の子を殺したことがあるからだ。
 殺されるために存在する「イケニエビト」の少女を巡る物語。
<感想>
 この作者のもう少し最近の作品も読んでいるけれど、これがデビュー作。デビュー作にはその作家の真髄が詰まっていると言うけれど、まさにそんな感じ。イジメなんかの場面は読むのが辛く、ホラー風味の逸話は背筋をゾクゾクさせる。なんか嫌なんだけど、でも読まずにはいられないみたいな力を感じる。
 終盤の展開がやや強引かなと感じるけれど、全体として淡々と進んでいく物語からは目が離せない。
 しかし、一番驚くべきは、これが四年前のMF文庫の新人賞を獲っているということだ。ハーレムもの全盛に思える今のレーベルからはちょっと想像がつかない。