木製の王子 (講談社ノベルス)

木製の王子 (講談社ノベルス)

<粗筋>
 著名な画家・白樫宗尚の息子の妻・晃佳の首だけが屋敷のピアノの上で発見される。胴体は焼却炉で焼かれていた。しかし、屋敷に居た家族全員に分刻みのアリバイがあり、犯行は不可能に思われた。
<感想>
 10年ぶり以上の再読。でも、なんとなく事件の核心部分は覚えていた。それだけ変わった作品。時刻表でも無いのに分刻みのアリバイトリック、奇妙な家族と思想、そして突拍子もない真実。改めて麻耶作品を読むと、内容もさることながらそれを支える文章も独特の味わいがあることを知る。
 しかし、この作品が木更津シリーズだということを覚えていなかった。ノンシリーズだと思い込んでいたわ。『夏と冬の奏鳴曲』『痾』あたりに関するエピソードは覚えていない部分も多いな……。この辺りもいずれ再読したいところ。
 冒頭の著者の言葉によると、この頃作者は結婚した模様。新しい家族ができた時に、このような家族の物語を書くとは、やはり只者ではない。