少女不十分 (講談社ノベルス)

少女不十分 (講談社ノベルス)

<粗筋>
 10年前、当時大学生だった僕は、ある少女のある異常な行為を目撃する。それから一週間後、僕はその少女Uに誘拐されてしまう。
<感想>
 新年第一冊目は、昨年末の飲み会で薦められた本でスタート。序盤は読みにくさが勝る。語り手の「僕」は明らかに作者自身を彷彿とさせるのだけれど、その自分語りが煩わしく感じる。ただ、中盤以降はそれも気にならなくなるほど、僕と少女Uの関係に引きつけられる。
 Uの自宅に監禁される「僕」。家人はなく、脱出しようと思えばできるのにズルズルと居続ける「僕」とUの間には、ある種の信頼関係のようなものが築かれていき……。この物語は、西尾維新の作品をまったく未読だと、きっと思い入れはできない。
 私は戯言シリーズ以外は数冊を読んだ程度で、化物語刀語はアニメしか観ていない、それほど熱心な読者ではないけれど、それでも西尾維新という作家の現代における存在感というのは、ある程度理解しているつもり。彼が支持されるのは、やはり、この物語の最後に書かれているような理由があるのだろう。
 というわけで、西尾維新の話に共感を抱く人ならば読んでみて、きっと感じ入るところがあるのでは。