家康、死す 上

家康、死す 上

家康、死す 下

家康、死す 下

<粗筋>
 永禄10年(1567)年、家康が何者かによって暗殺される。織田と武田に挟まれ、嫡男はいまだ幼い徳川家の行く末を案じた重臣・世良田二郎三郎らは、家康の異母弟で同日同時刻に産まれた僧・恵最を替え玉とすることにした。
 世良田らは嫡男・信康が家督を継げるようになるまでの繋ぎのつもりであったが、新しい家康は恐ろしい才覚を発揮し始める。
<感想>
 私くらいの年だと、隆慶一郎原作の漫画『影武者徳川家康』で、世良田二郎三郎の名前はお馴染みだけれど、この小説は設定はかなり異なっている。上巻では、誰が家康を暗殺したのか、そして下巻では信康と家康の対立を軸に、世良田の生涯を描いている。
 歴史小説は真っ当な話よりも、こういう異説・珍説を取り扱ったものが好き。史実の出来事を、そういう風に視点を変えてくるかあ、というミステリにも似た面白さがある。
 この本の感想で言えば、悪役である新・家康の描写が薄いので、そこが物足りない。あと最後のどんでん返しはいるかなあ……。却って、世良田が不憫になってしまう。あと、どうしても人物の血縁関係が複雑で、苗字の同じ人がたくさん出てくるので、頭がごっちゃに……。
 世良田二郎三郎や、忍びの紗衣といった周囲の人たちは、清廉で強靭な精神を持っていて、魅力的でした。
 こういう歴史小説を読むと、登場人物のことが知りたくなって、ウィキペディアを読みあさることに。
 歴史上のとんでも説を扱った小説が好き、という原点はたぶん高木彬光の『成吉思汗の秘密』を読んでからだな。