紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

<粗筋>
 波濤マナブの友人・毬井ゆかりには、人間がロボットに見えるらしい。
<感想>
 粗筋を書くのが難しい作品。
 第一部と第二部に分かれていて、おおまかに第一部はゆかりの、第二部はマナブの物語。
 後書きによれば、もともとは第一部のみが短編として書かれたのを、第二部を付け加えて一冊の文庫にしたとのことで、ちょっと断絶というか、繋がりの悪い部分を感じます。
 メインは第二部でしょうか。
 ゆかりによって、ある特殊能力を会得したマナブが、不幸な目に会ったゆかりを救うために、トライアンドエラーを繰り返しながら、最善手を見つけ出そうとするお話。
 ちょっとネタバレになりますが、『まどマギ』『シュタインズ・ゲート』と最近はちょうどその手の話が話題で、そういう意味では珍しくないのですが、その過程はかなり独特。
 「どのように」という部分はあまり描かれず、もっと抽象的・観念的な話が続きます。
 特に面白いのは、表題にもなっている「クオリア」という言葉。初めて知った言葉なのですが、確かにこの意味を知れば、物書きとしては何かを書いてみたい、という気持ちになるかも知れません。
 
 「ラノベの皮をかぶった本格SF」という評もあるようですが、さもありなん。
 ただ、ラノベに馴染みの無い人が本作を受け入れられるか、と言われると疑問もあります。
 ほぼ独白で進むために読みにくく、また話の起伏も乏しいです。本格SF作家ならば、きっと違う料理の仕方をするだろうなあとは思います。
 ラノベの中でこそ輝く作品、とも言えますが、表紙絵に抵抗の無い方にはお薦め。