ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

<粗筋>
 国境を超えて普及した日本型のホビーロボット・DX9。「彼女」たちは世界各地の戦場で、スラムで、都市で、人間の意味を問う。表題作を含む5編の連作短編集。
<感想>
 デビュー作である前作『盤上の夜』は、込められた熱量が素晴らしく、その熱気に当てられたかのような読後感でしたが、正直なところ今作はそれほどでも……。ちょうど今日は候補に上がっていた直木賞の落選が決まったところだけれど。
 『盤上の夜』でも書きおろしの新作二編がいまいち合わないなあと思ったのだけど、懸念したとおりに。洗練された、という意味ではこちらの方がきっと上なのかも知れないけれど、作風が抽象的になってきて、肌に合わなくなってしまった。
 うーん、何がいまいちだったんだろうと思い起こすと言葉にすると難しい。私に理解できるだけの頭脳と、感じ入るだけの感性が無いだけなのかもね。
 作中に登場して重要な役割を果たすDX9は、明らかに初音ミクがモデルで、読む人の99%は彼女たちのビジュアルを初音ミクで思い浮かべると思う。
 雨のように落下してくる歌姫ロボットとか、ビジュアル的には非常にそそられるんですけどね。
 伊藤計劃氏の死後に、宮内悠介という作家が現れたのは何かの縁かも知れないね。