大きな森の小さな密室 (創元推理文庫)

大きな森の小さな密室 (創元推理文庫)

<粗筋>
 死亡推定時期が150万年前という「更新世の殺人」、被害者の海馬の記憶を再生する「遺体の代弁者」など、密室、倒叙、安楽椅子、バカミス等々のジャンルをつめこんだ短篇集。
<感想>
 まず、ラノベでもこんなのは無いだろうというくらい、ほぼ会話だけで話が進行していく。登場人物も変人ならば、話も凄い。序盤の密室、倒叙は比較的おとなしいけれど、安楽椅子を扱った「自らの伝言」あたりからテンションが妙な方向に。
 バカミスの「更新世の殺人」を経て、たぶんいちばんの問題作、××ミスの「正直者の逆説」がやってくる。もはや、ミステリの名を借りた「何か」としか言いようがない。「遺体の代弁者」「路上に放置されたパン屑の研究」と感心するやら、呆れるやらのお話で終わる。
 いわゆる小説的な面白みは、ほとんどなく、どれだけ変テコなミステリを楽しめるかにかかっている。もう少し若い頃ならば、こういうのは大好きって言っていたと思う。人間を書くなんてクソ食らえ、トリック上等、と思っていたから。でも最近はちょっと年を取ったかなあ。
 本作も好きか嫌いかで聞かれれば好きなんだけど、ちょっとピンとこないところもある。
 尚、登場人物の多くが『密室・殺人』からの再登場みたいなんだけど、これ読んだのがかなり昔で全然覚えてない……。もちろん、覚えてなくても、この本からでも全然問題は無いですけど。