<粗筋>
 幼い頃、祖母から叱責されたため、本が読めない体質になってしまった五浦は、ひょんなことからビブリア古書堂で働くことになる。店主の篠山栞子は人見知りが激しいが、本のことになると途端に饒舌に。
 今は怪我で入院している彼女のもとへ、五浦は買取査定のために足を運ぶ。そして、その本にまつわるちょっと変わった客たちの話をすると、栞子はその謎と秘密を解き明かしていく。
<感想>
 いま話題で、本屋大賞に文庫本として初めてノミネートされた作品。評判に違わず、良い本でありました。まずは何より、本への愛情が滲みでてくるお話。ただ愛だけではなく、ときには悲劇も呼び起こす。本は魅力、魔力を有しているのです。
 ジャンルとしては、日常の謎系ミステリー。栞子は病院から動かず、五浦の持ち込む話から推理をするので、安楽椅子探偵ものでもある。一部、例外はあるけど。四編のうち、最初が五浦に関する話、そして最後が栞子に関する話、と最初は一巻完結の予定だったのだろうなあ、と思わせる構成。
 いわゆる良い話だなあ、と思うのは『論理学入門』。この夫婦にはほろりとさせられた。他の三編は、どちらかと言えば、本やそれを所有する人の「業の深さ」が書かれている。本編にある太宰の言葉を借りるならば、本もまたすべて「罪の子」なのかも知れない。
 と、まああまり堅苦しい話ばかりでもなく、隠れ巨乳らしい本の虫、栞子さん可愛いよ、可愛いよ、と愛でるのも良い。もともと作者はラノベ分野で活躍し、本書も表紙は抑えめではあるものの、ラノベに抵抗のある人にはちょっと手に取りにくい表紙ではあるかも。
 私は読書は好きだけど、ビブリオマニアでもなく、古書店巡りもほとんどしたことが無いような人なので、真の意味で栞子さんや他のマニアの気持ちが理解できる訳ではない。それでも、物語を愛する者として、なんとなく分かるなあ程度には思ったりするのだった。