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- 作者: 市川森一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/06/08
- メディア: 単行本
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島原の乱を、キリシタン・天草四郎側と幕府・松平信綱側から描いた歴史小説。
四郎を、天正少年使節の一人ながらも帰国後に棄教した千々石ミゲルの忘れ形見として書いている。
<感想>
島原の乱と言えば、最後は兵糧尽きたキリシタン側が幕府に攻め寄せられ一方的に虐殺される、みたいなイメージを抱いていたのだけれど、この小説では随分と穏やかな様子が多々描かれている。もちろん、最後は全滅するのだけど。
天草四郎は神の生まれ変わり、というよりも信仰に厚いひとりの少年として描かれ、また「知恵伊豆」と呼ばれ冷徹な印象の強い幕府方・松平信綱も情に厚い人物として描かれている。その辺りが、陰惨な戦を題材にしている割には安らぎさえ覚える読後感に通じている感じ。
自分たちが信じるものに殉じて生きた、そういう時代に人々がいたのだなあと想いを馳せる。タイトルの意味が分かるラストシーンも印象的。
四郎の異母兄で幕府方にいた度馬之助(自身はそれを途中まで知らなかった)や、幕府と内通した裏切り者・右衛門作のその後などが、もう少し深く描かれると良かったかなあと思う。