夜の国のクーパー

夜の国のクーパー

<粗筋>
 仙台で公務員をしていた「私」は、釣りに出た海で流され、気がつくと見知らぬ土地にいた。
 そこで「私」はトムと名乗る猫に出会う。トムは自分の住む国の話をする。
 その国にはクーパーという謎の怪物の伝説が残っている。そして、その国と隣国・鉄国との戦争が終わり、鉄国の兵士たちが乗り込んできたという。
<感想>
 最近の伊坂作品にはピンと来ないこともあったんだけれど、これは良かった。ミステリではなくてファンタジー色の強い作品ではあるけれど、いわゆる寓話とでも言うようなお話。
 本筋は弦や頑爺たち人間をめぐる話ではあるけれど、猫とネズミの話に色々と考えさせられる。
 もし、ある日突然猫とネズミの言葉が通じるようになったら、猫は、ネズミは何を思うのか。猫は気ままなので、あまり深く考えない。ネズミは自分たちの身を守るために、策を練る。
 最後に出る結論は、当たり前すぎるようだけれど、それを出すまでに考えることが大切。
 誰だって、みんな勘違いをしながら生きている。誤解を埋めるには、歩み寄るしかない。
 「私」にまつわる秘密はわりと容易に想像がつくのと、最後に明かされる真実が一人の口から話され続けるだけ、というのはちょっとどうかなと思わなくもないけれど、でも全体的にはとても面白い。
 書評を読むと、まれに、某作品のパクリとか言っている人がいるみたいだけれど、これはパクリではなくてオマージュでしょうに。名作からインスピレーションを得て、自分なりの物語を生み出した。ただ、それだけのこと。なんでもパクリ、パクリ言ってればいいと思うなよ。