小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団

小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団

新版を観に行ったのが、たった二週間ほど前だという事実に驚きを隠しえません。
さておき。

ロボットSFの第一人者にして、大の藤子・Fファンとしても知られる作者による、大長編ドラえもんの中でも屈指の名作と名高い作品のノベライズとあっては、嫌でも期待せざるを得ません。
そして、その期待に違わぬ、藤子ファン垂涎の作品となっています。
基本的には原作のストーリーを踏襲しつつも、終わりの方では一部オリジナルの展開を迎えます。
原作にある「死」のイメージをさらに増幅させ、たとえば序盤の見所であるザンダクロスによる無人ビルの破壊シーンは、9.11を引き合いに出して、その描写をしています。
その他、シリアスな場面を子供にも伝わるようにしながらも、遠慮無く描いています。
原作ファン、映画ファンならば、迷わず手にとって問題ないでしょう。
こんな文章がさりげなく挟まるところが、ドラえもんファンなのだなあと感心する次第です。

「それでも、だからこそ、この瞬間はみんなといっしょに歌っていたかったのだ。のび太にはそれがわかっていた。ジャイアンにも、スネ夫にも、ドラえもんにもそれがわかっているはずだった。
だからみんなで、心をゆらして、こうして手を振り、足を上げて歌うのだ。友達だから、君がいるから、歌うのだ。
一〇〇年後でも、歌うのだ。」