ひとまず、当分の間は通常営業です。本の紹介などを。

謎解きはディナーのあとで

謎解きはディナーのあとで

刑事で超ご令嬢の麗子が出会う事件の謎を、その話を聞いただけで、毒舌の執事・影山は解き明かしてしまう。
キャラクターの掛け合いがとても面白い短篇集です。麗子の上司・風祭も良い味を出していて、とにかく読んでいて楽しい。
最近にはなかったユーモアミステリー。ちょっと古いですが、赤川次郎の風味を思い出しました。
ミステリとしても細かい点をついてきます。伏線と謎解きの醍醐味。
犯人の動機や思想なんかは完全に無視の、いわゆるゲーム感覚のミステリなので、そのあたり好き嫌いがあるかもですが、お薦め。
 
とある飛空士への恋歌 5 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 5 (ガガガ文庫)

シリーズ完結。
素晴らしい完結編でした。物語の一方のメインである空族との戦いは前半で停戦を迎え、あとはカルエルとクレアの恋の行方に焦点が移ります。
「空の果て」でカルエルたちが見る風景、彼の演説等々、美しく、そして力強い描写が続きます。
そして、アリエルの恋もまた……。「歌えない恋の歌もある」のワンフレーズがとても素敵です。
余韻のあるエピローグが、また良い。
このシリーズは好評だった『とある飛空士の追憶』の続編として書かれ、それを超えることができるのかという期待と不安がありましたが、少なくとも『追憶』に並ぶ傑作と言うことができると思います。
 
去年はいい年になるだろう

去年はいい年になるだろう

2001年9月11日。ガーディアンと名乗る団体が、突如現れ、本来の歴史ならば起こるはずだった同時多発テロを未然に阻止したと発表する。24世紀の未来からやってきたアンドロイドだという彼らはその後も地球にとどまり、戦争や貧困を無くそうとする。
作家の山本弘のもとにも、カイラ211というアンドロイドが訪れ、協力を求める。
空想科学を通して、現代社会や人間の本質を描くという、まさにエスエフ。
前半は比較的コミカルに話が進むけど、後半にある事件が起きてからはとても重たいテーマが描かれます。
なぜ戦争はなくならないのか、人は本当に優れた知性体なのか、完全な善意はどんな事態を招くのか。
読んだあとは、色々と考えるところのある一冊でした。