宝島社の年末恒例「このミス」が発表されたようですね。
 
10位以内の国内作品で読んでいるのは、1位「悪の教典」(貴志祐介)、2位「写楽 閉じた国の幻」(島田荘司)、4位「隻眼の少女」(麻耶雄嵩)、10位「綺想宮殺人事件」(芦辺拓)の四作品。
 
悪の教典」(貴志祐介) 

悪の教典 上

悪の教典 上

悪の教典 下

悪の教典 下

生徒に慕われ、同僚や上司からの信頼も厚い教師・蓮実が持つ裏の顔とは。
みたいなお話。上巻でじわじわと蓮実の異常性が語られ、そして下巻で一気に爆発します。
なんというか、ノンストップ超特急みたいな感じで一気に読めてしまいます。
作者のインタビューを読むと、とにかくエンターテイメントを目指した娯楽作品とのこと。
なるほどと頷ける出来です。娯楽と言っても、誰でも楽しめるかどうかは別ですが。
ただ、個人的には読みやすさを重視したせいか、この作者の傑作「新世界より」のような重厚さに欠けるのが不満ですが。
 
写楽 閉じた国の幻」(島田荘司
これは前回に紹介しました。予想通り、上位に来たので、自分の眼も決して満更でもなかったと安心しています。
 
「隻眼の少女」(麻耶雄嵩
隻眼の少女

隻眼の少女

ちょうど昨日読み終わり、まさに紹介しようと思っていた本です。
死に場所を求め、大学生の静馬はある寒村を訪れる。そこで殺人事件に巻き込まれ、容疑者にされるが、隻眼の美少女・みかげの推理によって、疑いが晴れる。その後も起こる連続殺人に静馬とみかげが立ち向かう。
というお話。
これは、なんというか。凄いです。もうラストに向かってあり得ない展開が続きます。
こればかりは、読んで驚け、というしかありません。
ただ、この作者の作品を読むのは初めて、という人は本を壁に投げつけるかも。
できれば、デビュー作「翼ある闇」や「夏と冬の奏鳴曲」「鴉」「螢」「木製の王子」あたりを読んで、「麻耶イズム」に慣れてから読んでもらいたいものです。
次から次へと変化球を投げ込んでくるこの作者の引き出しは、いったいいくつあるのでしょう。
 
「綺想宮殺人事件」(芦辺拓
綺想宮殺人事件

綺想宮殺人事件

「綺想宮」を訪れた探偵・森江を待っていたのは、過剰に凝らされた見立てをされた逗留客の死体の数々だった。
というお話なのですが……正直、私はこの作品はあまり評価してないです。
ミステリを解体する、みたいな試みがされているのですが。「その幻想をぶち殺す」じゃないのだから、そんな野暮なことはして欲しくありません。

これからも、良い本に出会いたいものです。