写楽 閉じた国の幻

写楽 閉じた国の幻

最近読んだ本の中で、特に面白かったのはこの本。
東洲斎写楽といえば、江戸時代にほんの短期間だけ活躍した謎の浮世絵師。その正体は謎に包まれていて、様々な説が取りざたされている。
その謎にあの島田荘司が挑む、と聞けば手に取らないわけにはいかず。
期待に違わず、その答えはどうしてこれまで、その説が出てこなかったのかが不思議なほど説得力があり、かつ意外性に富んでいる。
まさに魅力的な謎と見事な解決を兼ね備えた、一流の推理小説
間に挟まれる江戸時代編の描写も、時代の風が感じられて面白い。
後書きにいわく、まだ書き足りないことがたくさんあるらしく、事実、残された謎や途中になっているエピソードもある。是非とも、続編を希望したいところ。
その後書きですが、ネタバレがあるので、絶対に先に読んではいけません。くれぐれも。
作者が以前から主張している日本論・日本人論がちょっと鼻につくのが難点だけど、それ以外はほぼ満足。
年末のベストテンに名を連ねることは間違いないと思います。
 
あと、面白かったのをいくつか。
 
漂流巌流島 (創元推理文庫)

漂流巌流島 (創元推理文庫)

これも、歴史の隠された真実を探るというもの。短編集。
巌流島の決闘に隠された秘密や、赤穂浪士の亡霊に殺された大名の話など。
残された文献の僅かな隙をつく推理が面白い。
 
インシテミル (文春文庫)

インシテミル (文春文庫)

「実験」のため「暗鬼館」に集められた12人。一週間を過ごせば多額の報酬がもらえるはずだったが、やがて参加者が殺されていく。
典型的なクローズドサークルもの。最後までスリリングで、気が抜けない。ミステリー好きにはにやっとする趣向も凝らされています。